13)小6の夏休み
夏休みが来た~お母ちゃんに連れられてお母ちゃんのお兄さんの所へ行くことになった~山口県の小野田市だという~家に居ればいつも肩身の狭い思いで過ごしてる僕を察してくれたのだ~


蒸気機関車だ~動き始める時にシュッシュッと下から水蒸気を排出しながら汽笛を鳴らす~ゴトンゴトンと音とともに動き出した~やがて列車の窓から田畑や山々の景色が見えては遠ざかってゆく~去りゆく風景に首も左右に動く~
夏だし 風を仰ぎたいと窓を開けると~石炭を燃焼した煙とともに粉塵のカスが眼の中に入ってきた~目が痛いので指でこすると眼中に入った粉塵つぶで又痛くなった~そうこうしているうちに関門海峡の海底トンネルだ~通過中にはひんやりとする~
小野田駅に着いた
バスで30分ほどだった~山間のデコボコ道を下り~藁葺き屋根の農家に着いた~そこにはおじいちゃん・おばあちゃん・おじさん・おばさん・年上の男子二人、年下の男子三人と女子一人の大家族だった~


生まれて初めて訪れた“天国”だ~

小さな山の中腹にある家から田園風景がパノラマのように一望できた~山があり・湖もある~牛がいる~ヤギがいる~鶏もいた~

おじさんは放任主義だった~危険な遊びの注意だけ~あとはほったらかし~いつもと真逆で自由奔放~天国みたいだ~僕はすぐにいとこが大好きになった~
毎日~セミがミンミン・ワシーワシー・ジ~ジ~と三重奏の如く歌いだす~山にはカブトムシ・クワガタ・綺麗な模様をしたカミキリムシがいる~小川には鮒・ウナギ・カエル・ザリガニ・ゲンゴロウと何でもいる~みんなで魚とり遊びにハシャギ廻って楽しくてしょうがない~くたくたになるまで湖や川で遊び<泳ぎも将棋も覚えた)


遊び疲れて草むらに寝ころび空を見上げれば~視界に拡がる青空に太陽がサンサンと眩しく眼が痛いほどに輝いている~ここでの夏休みは正夢だ~<これは中学三年まで続いた>不憫な生活があったからこそ~楽しみと喜びは何倍にも膨れた~
14)子供の喧嘩は必死のパッチ
ある日:校庭で全校生徒の朝礼中に今までに感じた事のない視線を感じた<僕を睨みつけてる>憎しみがこもった視線で睨んでいる<知らない同学年の生徒のようだ>朝礼が終えるとそのことはすぐに忘れていた~ところが後日に廊下を歩いていると待ち伏せをしていた・睨みつけている~
何なんだろう<話をしたこともないのに>気にしないことにしたが・何度か会うと~なんと憎たらしいやつなんだと感じてきた~

6度目だった~階段を上がると待っていたようだ<周りには誰もいなかった>いきなり拳を握って殴りかかってきた~アッと~思った瞬間に反撃に転じた~
バタバタッと殴り合い取っ組み合う~上に成ったり下に成ったりで必死のパッチだ~上になり殴ろうとした時に~ジリリーンとけたたましい音が鳴り響いた~始業のベルだ~即座に止めて教室に戻った~
教室に戻った時にはもう頭にはなかった~何故だかその後に一度も会わなくなった・生涯これ以上に憎たらしいと思えた人に出会ったことがない~この時に卒業させて貰えたんだ~
道路の水撒きはやけのやんぱちだ~
義父は何かと雑用を命じる<家の前の道路は車が通るとほこりが舞う>脇に流れる小川の水を<4リットルは入る長い柄のついた桶>で水撒きをやる~終えると又一からやり直しをさせる~これは結構重い~

これをやれば・力が強くなれるんだ~と言い聞かせ~やけくそになって撒いた~範囲も30メートルほどに~
🙃やめろ~と言われるまでやったこともある『だけど日曜日は自由だ』家族がいるときは・命令はない!
15)自分を褒めてやりたい
12月の冬休み前から夕刊の新聞配達を始めた~一日80円でもひと月働けば2400円<一月後に初めてお金を貰った>使い道は決まっていた~以前から写真屋さんの前を通る度にじっとショーウインドウを覗いていたんだ『僕は自分の写真を持っていない』一枚でいい・写真が欲しかった~
いつも覗いて料金は知っている・一番小さい白黒3.5X4.6cm=400円
写真屋さんのドアーを恐る恐ると開いた<小さな声で写真を撮って下さいと~おじさんに言った>恥ずかしさと嬉しさ混じりの表情だったに違いない~
おじさんはハイ笑って~笑ってと言ってくれた<普段は笑う事がない>つい笑顔になった~この古い写真は宝物になった~何度も引っ越したが~手放すことはなかった<苦しい時の想い出だ~>


新聞配達を終えて
夕刊配達の帰り道だった~点々とする民家を歩いていると音楽が聞こえてきた~窓越しからそっと覗いてみると何本ものろうそくが灯っている<赤と白の服を着たおじさんと同年代の子供達が讃美歌を口ずさんでいる>あ~今日はクリスマスなんだ~背伸びをしてジッと眺めた<僕には縁遠い世界なんだ>冬空の下~寂しい思いでとぼとぼと帰った~
心の行き場所を探そう~
自分の世界~そうだ魚釣りに行こう~毎月のお金で釣り道具を買い揃えていった<とにかく家に居たくない>恐い視線から逃れたい~脳裏にはこの一心だけだった《将来の夢を考えることなど~ひとかけらも持てなかった》
道具は揃った

バイトも4か月が過ぎ~釣り道具も買い揃った<これで遠くへ行けるぞ~>待ちに待った日曜日だ~早起きして朝食も取らずに前日に買った釣り餌と道具を背負って出かけた<嬉しくてたまらない~>
朝一番のバスに乗って港に着いた~自分のお金で買ったあんパンを口に入れた<おいしい>そして防波堤に着き~針に餌をさして・海中に投げ入れた~


なんという解放感だ~生きた心地がする<みんな忘れられる~全て忘れられる>僕だけの世界だ~嬉しいな~楽しいな~海と波と船が~幸せだ~最高の気分を味わえた<帰りに食堂に寄ってうどんを食べた>
16)中学生になった
カバンを片手に真新しいつめ入りの学生服を着て中学校に行く~近隣小学校と併合になったのでクラス数13組:同学年の生徒は700名もいる~僕は一年2組:男子53名~今とは大違いの生徒数だ~

中学生になっても勉強はしなかった<お前みたいな奴は勉強するな~義父の怒鳴り声が耳にこびりついてる>もう一つは勉強机もない~
水泳大会は大失敗
運動能力は上位だった~足が速く反復横飛びは楽にやっても一番だ~駅伝や水泳大会にはいつも選ばれたが<水泳大会で忘れられない失敗を思い出す>平泳ぎ50メートルの時に皆を驚かしてやろう~前半25メートルを潜ったままゆこう~


スタート合図とともに飛び込んだ~潜って15mほど過ぎたところでざわめきの声が水中迄聞こえた~よし~このまま潜って行こう<まだまだ余裕があるぞ>25m迄にはあと二漕ぎくらいかな~と~思い切り漕いだときに『ガツン』と脳天に激痛が走った~漕いだ瞬間にコンクリートの壁に頭をぶっつけた~
復路は痛さに耐えられず・まともに泳げなかった~楽勝のはずが~3番になった~どこか間が抜けてる~
家業の手伝いで
コークス(燃料材料)作りの仕事を始めたのはいいが・僕がやるようになった・モーターでベルトを廻し大型の餅つき機械の様なものでガッシャン・ガッシャンと近所迷惑になる・大きな騒音だ~
学校から帰って毎日だ~粉にした粉塵は黒くて体に付着したり息苦しくなるので口にタオルを巻いてやっていた、こんな日が半年続いたが利益が薄いのか・騒音のせいかで辞めることになった・助かった・
隣に家が建った~誰か引っ越してきた
何処かの銀行の支店長さんらしい~家との間を庭にしたようで壁が無く犬小屋があった~紐 に繋がれた番犬(ジョン)がいる~ジョンはおとなしい性格で吠えることもなく番犬には向かない~食事は与えられるが いつも繋がれたままで<寂しそうな表情>をしている~ある日~ジョンの紐 をはずして外に連れ出した~


近くの空き地に行って一緒に走り廻った<ジョンは喜び勇んで・ハシャギまくっている>こんな経験がなかったのだろう~それからは時々紐を外して一緒に遊んでやることにした<いつの間にかジョンの主は僕になっていた>
犬の主は一人だけ<複数の家族でも一人になる>主に優しい人は味方に~そうでない人は敵になる~
あるスナックのママがこんなことを言ってた<うちの犬はね~主人に吠えるのよ>これはご主人とママが親密でないことを意味する(気の強いしっかり犬は主を守ろうと敵に吠えるのだ)犬は正直だ~


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